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http://raedinthemiddle.blogspot.com/の日本語化。コメント欄はなし、トラックバックはオープン。Raedへのメールは彼のウェブログからどうぞ。

Faiza blog,7月31日

一家のお母さん,Faizaさんのウェブログより,7月31日の記事を。

その前の7月25日の記事が,「ハリドが救出されるまで」blog(運営はリバーベンドプロジェクトさん)に掲載されています。この記事の「続きを読む」のところで転記させていただきます。

http://afamilyinbaghdad.blogspot.com/2005_07_31...

Sunday, July 31, 2005
2005年7月31日(日)

こんばんは。

私たち家族はここアンマンで,親族や友人たちとともに,元気でやっています。ここでは,安全と平穏のある生活がいかにすばらしいものであるかを感じることができます。

2晩前,就寝したときの私の気持ちは重く暗いものでした。私は心の中で神に語りかけました――この世をコントロールしているのは,神よ,あなたの御意思です。私の意思ではありません。私はかよわい1人の人間に過ぎません。私の方があなたよりもよく理解しているなどとは申しません。ただ,私は混乱しているのです。人間同士が互いに抑圧しあうことの意味がわからないのです。お金と権力があるからなのでしょうか?

サダム・フセイン政権が倒れたとき,私たちの誰もが嬉しかった。イラクでの悪い行いがこれで終わる,イラク人への虐待や拷問がこれで終わるのだとと考えた。闇の時代の終わりだと……イラクの歴史の新しい時代の始まりだと考えたのです。

けれども2年以上が経ち,今もまだイラクは,昔と同じ醜い行いに苦しんでいる。悲しいことです。何一つ変わっていない。やっている人物の名前や顔は変わっているかもしれません,しかしメンタリティは同じです

戦争後,私たちはこう言いました――イラクにくるのはアメリカだ,アメリカは私たちの新しいリーダーに,人権を尊重する方法を教えるだろう,そして私たちの国で民主主義を確立する方法も教えるだろう……自由と民主主義とはどのようなものなのだろう,待ちきれない!

けれども2年以上が経過した現在,私たちは押さえつけられ,イラク国内の恐ろしい生活から逃げ出してしまいました。そしてまだ,いつか私たちの国で自由と民主主義を達成することが本当にできるのだと夢見ている。

本物の自由と民主主義が……偽物ではなく。

そして,私たちが欲する変化を起こすために,私たちはみなで協力できると信じています。個々人の夢や行動ではなく,多くの人が集まった形で,それは為されねばならない……。

そして神は見守っておられる,私たちが行動を起こすのをじっと。

そして最後の審判の日に,神はみなにこう問われることでしょう――地球上の押さえつけられた人々のために,あなたは何をしましたか? 地球上で正義と平和を達成するために,あなたは何をしましたか?

これが私たちのすべきこと……

地上に平和を成すために,神が天使をお遣わしくださることはない。それは私たちのすべきことなのです。

イラクのこと,イラクの人々のことを思うと悲しくてなりません。けれども私はまだ,この狂気を止めるために私たちみながともに協力することができるという希望を抱いています。

読んだ雑誌に書かれていました――意思のあるところ,道あり(where there is a will, there is a way)。

faiza

# posted by faiza @ 10:24 PM
【“Faiza blog,7月31日”の続きを読む】
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Jarrarさんたちについて簡単な説明

Raedさん(長男),Khalidさん(次男),Majidさん(三男)とFaizaさん(お母さん)は,2003年12月からウェブログをやっているイラク人の一家です。一家は現在,基本的にイラクの隣国ヨルダンのアンマンにいます。(ただしMajidさんはカナダで大学に通っています。)

彼ら一家についてはhttp://teanotwar.blogtribe.org/の方で2004-10-21に書いてあるのですが,今回改めて書いておきます。(前の記述とは違うことを書きます。同じことを書いてもつまらないので。)

お父さんはウェブログはやってないけど事業家(水道設備関連)として会社のウェブサイトは持ってます。

お母さんのFaizaさんは南部の裕福ではない家庭に生まれ,大学に通って工学を専攻し,技師としてお父さんと共同で事業を営んでいます。Faizaさんのご兄弟にはお医者さんが複数おられ,ひとりはサダム政権下で海外に亡命,別のひとりも戦争後「殺す」などの脅迫を受けていたようで(ほかの多くの知識人にも同様の脅迫が為されていたそうですが)外国に移住してしまいました。Faizaさんはそのことをウェブログで嘆いておられました。
■Faiza's blog:http://afamilyinbaghdad.blogspot.com/

このご夫婦の3人の息子が,年長順にRaedさん,Khalidさん,Majidさん。Raedさんはバグダードの大学を卒業した後アンマンで大学院に進み(今年修了),Khalidさんはバグダードで大学に通っています。Majidさんは今年からカナダの大学に留学しています。RaedさんとKhalidさんは20代,Majidさんは10代です。
■Raed's blog:http://raedinthemiddle.blogspot.com/
■Khalid's blog:http://secretsinbaghdad.blogspot.com/
■Majid's blog:http://me-vs-myself.blogspot.com/

彼ら一家のなかで最も早くウェブログを始めたのが長男のRaedさんです。イラク戦争が始まる前,バグダードにいる彼の友人Salam Paxが始めたウェブログ"Where's Raed?"は,SalamからRaedへの連絡のために始められたものですが,大規模戦闘終結宣言後,RaedもSalamのウェブログに書くようになっていました。やがて彼は家族の共同ウェブログを開設し,その後自分のウェブログを開設しました。(確か,「ママの投稿が多すぎて息子3人の投稿が流れる」というのが,息子3人が独立した理由だったと思います。)

大規模戦闘終結宣言後,Raedさんはイラクにおいて,民間人犠牲者の氏名や性別,職業といった情報を特定する作業を,米国のNGOであるCIVICと組んで,主導的に行いました。KhalidさんとMajidさんもデータ処理などで手伝っていました。その作業の成果は現在下記サイトで閲覧できるようになっています。
■IRAQI CIVILIAN WAR CASUALTIES:http://civilians.info/iraq/

※このCIVICの設立者である米国人女性,マーラ・ルジカは,民間人犠牲者に補償するよう米国議会に働きかける活動をして成果を上げました。彼女は今年4月にバグダードで米軍車列を狙った自動車爆弾に巻き込まれ,死亡しました。
http://ritmj.blog7.fc2.com/blog-entry-21.html

昨年8月のナジャフ包囲の後,Raedさんのウェブログに,ナジャフの医師との電話についての記事がアップされました(→2004年9月4日の記事)。

Saturday, September 04, 2004
今日,ナジャフにいる友人のひとりに電話をしました。ハイダー医師(Dr. Haidar)です。ナジャフがいかにひどい状態になっているかを聞きました。ハイダー医師によれば,殺された民間人は950人,これとは別に1570人が負傷。これは2003年の戦争中のナジャフでの死者・負傷者数の5倍を超えています。

ハイダー医師はナジャフの中央病院に勤務していましたが,この病院は数ヶ月前に米軍によって閉鎖されてしまいました。この病院からイラク人戦士が米軍を攻撃していたというのが理由でした。病院は閉鎖されて以後,一度も再開されていません。

ハイダー医師の話では,ナジャフはまるで戦場のようだとのこと。市街戦があったために,家屋のほとんどが何らかの形で影響をこうむっているとのことです。彼のいとこのうち2人が戦闘で殺されましたが,その1人は2人の子どもの母親,もうひとりは5歳の子どもの父親です。2人とも,自宅にいました。

ハイダー医師の連絡先は haiderrabee@hotmail.com です。

Posted by: Raed Jarrar / 9:49 PM


この医師は,Raed blogの5月の記事でも言及されていた人です。

ナジャフの大病院が閉鎖されました。レジスタンスの人たちの一部が,連合軍の駐屯地を攻撃するために,病院を利用したことを理由として。この大病院はベッド数600で,本当に大きな病院です。ナジャフにあるこれ以外の病院のベッド数をすべて合わせても,350に届きません。僕の友人のハイデル(Haider)医師がナジャフから下記のメールをくれました。米軍の攻撃が始まる前に,だれか助けを・・・。

《ナジャフの医師からのメールの内容》
私たちの病院が必要としているものについて訊いてみました。マネージャーのタリブ医師は,最も重要なのは直流変換電極のついた心電図モニタ(the ECG monitor with DC conversion electrodes)だと言っています。この機器は欠かせないもので,私たちの病院にあった6台は,米軍に占領されている大病院にあります。だから私たちには使えません。なるべく早急に,私たちの病院かナジャフ総合病院に,少なくとも1台必要です。
この機器は重要なもので,私たちは今この機器を是が非でも必要としています。これがあれば,何十人という心臓病患者の生命を助けることができるのです。
《ナジャフの医師からのメール,ここまで》


しかし,最低限,イラク国内にコンタクトのある人でこういう場合に動ける人を知らなければどうしようもないのです。このケースでは「こんなNGOがある」と紹介するくらいのことしかできませんでした。

ナジャフ包囲の2ヵ月後,昨年10月,ファルージャ総攻撃の準備段階の攻撃が連日続けられていたとき,彼らは「ファルージャ支援」のプロジェクトを立ち上げました。当時,彼ら一家はバグダード,アンマン,カナダと分散していたのですが,その分散をいい具合に活用してPaypalを利用して個人からの募金を募り(@カナダ),集まったお金でファルージャ避難民施設への医薬品(生理食塩水や医療用手袋など)を買って(@アンマン),それをまずバグダードに送り,そこから病院や診療所に届ける活動をしました。この活動では,私でも多少は実際に必要なものを提供することができました。この医療支援の活動は今年4月に「第一段階終了」となりました。
http://ritmj.blog7.fc2.com/blog-entry-19.html

現在彼らは,先日100人もの死者を出したムサイブの爆弾攻撃の被害者(負傷者)のために,火傷の薬などを送るよう動いているとのことです。